考 現 学

〜目的なくただ気づいたことを書き続けるという営み〜 「誰もが簡単に書くことができる時代」だからこそ「書くことが開く可能性」を

自己表出が時を超えて生まれてくる

おばあちゃんの認知症がひどくなってきた。

 

今のおばあちゃんが口にするのは、

おばあちゃんが若かった時、

元気だった時、

心の中で表出してしまった気持ちだ。

 

寂しかったこと、むかついたこと、

それをきっと言葉にしたかった。

寂しいと。一緒に住みたいと。一人にしないでと。

 

でも、その心の中で表出していたものを、

言葉や文字や体で表現することができなかった。

 

その自分の外へ表出されなかった自己表出、

自分で押し殺していた自己表出が、

時を超えて爆発的に現れてきているのかもしれない。

 

本当に自分から湧き上がってきた気持ちを、

湧き上がってきた思いを、

時を超えて表現しているのかもしれない。

 

それは、どんなに強烈で、心のない言葉でも、

きっといつかのおばあちゃんが、

誰かにわかってもらいたかった、

いや自分の外に表現したかったものなのかもしれない。

 

自己表出を押し殺したって、

自分という体から湧き出たものを、

自分が止められるはずはない。

 

脳でストップさせていたものも、

いずれ脳の機能も衰えて、

そのせき止められていた自己表出は、

時を超えて溢れてくるものなのかもしれない。