自己表出が時を超えて生まれてくる
おばあちゃんの認知症がひどくなってきた。
今のおばあちゃんが口にするのは、
おばあちゃんが若かった時、
元気だった時、
心の中で表出してしまった気持ちだ。
寂しかったこと、むかついたこと、
それをきっと言葉にしたかった。
寂しいと。一緒に住みたいと。一人にしないでと。
でも、その心の中で表出していたものを、
言葉や文字や体で表現することができなかった。
その自分の外へ表出されなかった自己表出、
自分で押し殺していた自己表出が、
時を超えて爆発的に現れてきているのかもしれない。
本当に自分から湧き上がってきた気持ちを、
湧き上がってきた思いを、
時を超えて表現しているのかもしれない。
それは、どんなに強烈で、心のない言葉でも、
きっといつかのおばあちゃんが、
誰かにわかってもらいたかった、
いや自分の外に表現したかったものなのかもしれない。
自己表出を押し殺したって、
自分という体から湧き出たものを、
自分が止められるはずはない。
脳でストップさせていたものも、
いずれ脳の機能も衰えて、
そのせき止められていた自己表出は、
時を超えて溢れてくるものなのかもしれない。